第2章 なにが霊長類の社会の絆を支えたか
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霊長類は社会的で、その特異な絆のおかげで長期にわたって安定した緊密な群れを形成する 動物が地上に降り、逃げられる木々が少ない開けた土地で暮らすようになると、捕食者に捕らえられる危険が増す
こうした状況下では、共同体の規模が増し、社会関係を保つために相互のつながりが深まる
これは多数の個体が団結し、いざというときに他者を助けられるようにするためと考えられる
集団で暮らすことはコストもかかる
直接的コスト
共同体の葛藤から生じる
食べ物や一番安全な休息場所をめぐる個体間の争い
直接的コストは共同体が大きくなるとたびたび起きる
間接的コスト
共同体の規模が増すにしたがって、全員に栄養を行き渡らせるには、起きている時間に食物を求めて移動する時間を増やさなければならない
このことは、他の活動に振り分ける時間が減ることを意味する
また移動はエネルギーを消耗するので、食物探しの移動に要する余分なエネルギーをまかなうには、さらに食物を摂取しなければならない
さらに移動は捕食者に出会う新たなリスクもともなう
ただ乗り
霊長類の共同体は一種の暗黙の社会契約(捕食者に対抗するための集団解決策)だが、社会契約はただ乗りする者によって常に破られる定めにある ただ乗りするものは、契約の利点を享受する一方でコストは払わないので、二重に得をする
仲間に利用されるリスクは共同体の規模とともに増す
霊長類では、直接的なコストはおもにメスに降りかかる
こうしたストレスは階層構造の下位にいる個体に集中するが、それは下位層には嫌がらせできる者が大勢いるからだ
こうした一時的な不妊が階層構造の下位で起きる率は高く、種によっては共同体の上から10位の層にいるメスは完全に不妊になることがある
共同体の規模とともにこの圧力が増すと、メスはより小さな共同体で暮らしたくなる
このメスによる繁殖戦略は、共同体サイズの増加に自然な歯止めをかける重要な要因となる
捕食圧のためにどうしても共同体を大きくする必要がある場合には、霊長類はこれらのストレスをなんとか解消せねばならない 集団生活のストレスを解消するために
サルや類人猿は集団内に派閥を作って他者の嫌がらせを封じることでストレスを解消する 派閥という強力な関係の形成には、相互にはたらきかけて絆を作る二つの異なる過程がある
これについては、ケンブリッジ大学の神経科学者バリー・ケヴァーンらが、ことのほか見事な実験によって実証している エンドルフィンが出ると、毛づくろいしている二頭は長い時間をともにすごし、義務感をともなう強力な関係を作り上げる
この義務感を伴う強力な関係が二番目の認知過程となる
これまでに得られた証拠は、類人猿が親密な関係を関係を保つのにエンドルフィンが独自のはたらきをすることを示している 毛づくろいや他の軽い社会的摂食(なでる、抱擁する)があると、皮膚に軽く触れたことに反応する特殊なニューロン(無髄C線維)が活性化し、この感覚を脳に直接伝える 霊長類で毛づくろいに反応してエンドルフィンを出すのがこれらのニューロンであるか否かはわかっていないが、最近私達が行ったヒトを対象にしたPET(陽電子放射断層撮影法)スキャン実験によれば、恋愛関係にあるカップル同士が軽くなであうと、エンドルフィンが放出されることが確かめられている 心理的には、エンドルフィンの放出は穏やかな脳内麻薬作用による高揚、軽度の鎮痛効果、快感、鎮静効果として経験される このことは、類人猿において強い愛着を形成する過程に深く関係しているようだ 派閥を形成し維持するのに毛づくろいが重要であることから見て、旧世界ザルや類人猿では毛づくろいに費やされる時間が、社会集団の規模と相関があることは驚くにあたらないだろう https://gyazo.com/1f76ccd136daed6385fde3c5f54422a4
残念ながら彼らの分析は議論するまでもないほど奇妙な多数の誤解にもとづいている
さらに重要なのは、彼ら独自のデータが、旧世界ザルと類人猿について、本書の図2-1に示した関係を縄張り性とは独立して明確に追認している点
毛づくろいによって毛皮が清潔になりゴミや寄生体が取れるということが問題なのではない
問題はそれに加えて、毛づくろいが社会関係を円滑にするために行われているのか否かという点にある
これは大きな集団では多くの相手に毛づくろいすることを必ずしも意味しない
実際、社会をもつ大半の霊長類では、集団の規模と毛づくろいの時間の増加にともなって、毛づくろいする相手の数は減る
種間および種内いずれの場合でも、毛づくろいするときにできる徒党の数は集団の規模とともに増す
これは集団の規模とともにストレスも増すため、自分が属する派閥が支障なく機能するか否かを確かめる必要性がしだいに切実になり、各個体は一番大切な相手に毛づくろいする機会を増やし、他の個体との気軽な毛づくろいをしなくなるためと思われる
時間的なストレスを感じているサルの母親は、浅い関係の個体には目を向けなくなり、ほんとうに大事な相手にだけ毛づくろいするようになる
霊長類の社会性でとりわけ理解が進んでいないのは、社会的つながりが実際にはどのような性質のものであるか
ヒトの場合には、主として情緒がかかわっているようであり、そのため定義は困難をきわめる 私達は自分の情動をあまり上手に表現できないので、人間関係の性質を測る尺度を作るのは難しい いたって簡単な神経科学的説明を試みるなら、脳の左側が支配する言語と、右側が支配する情動とがうまくつながらないからだ サルや類人猿にいたっては論外だ
このために社会関係の性質を知ることはほとんど不可能だった
とはいえ、相互の「つながり」を目にしたり自分で経験したりしたとき、私達はその絆の度合いを直感的に区別することができる
私達は絆には強いものも弱いものもあると知っているが、その理由となると正確なところはわからない
サルとヒト双方について使えるが、やや正確性に乏しい指標は、それぞれの友人のために費やす時間
私達の研究によれば、互いの顔を見ながらの交流時間はその関係の性質を維持するのに重要であることがわかっている
被験者に他者との関係を1~10の段階で評価してもらうと、評価は交流の頻度と強い相関を示した
実際、友人関係の情動的性質は、以前ほど会うことがなくなると急速に衰えていく(家族との関係についてはこの限りではない)
この理論は、人間関係を表す社会心理学的見方としては最も広く受け入れられているだろう
スタンバーグは愛を独立した三要素(親密性、情熱、献身)によって定義する 情熱は恋愛関係に特有なので無視すると、残りの二つからわかるのは、人間関係には「近しい存在」と「近しい感情」という二つの要素があるということだ
これらの2要素は、霊長類の関係における二重過程モデルの要素にまさにぴったり重なる 認知科学において、情報処理過程を意識的な部分と無意識的な部分にわける考え方
「近しい存在」
霊長類の関係では毛づくろい(物理的に近くにいる必要と、そこから生じる感情的な愛着)
「近しい感情」
認知的要素(相手のためならなんでもする、おそらくは、相手が困っていたら助けるという意志、あるいは社会的同盟を維持するのに欠かせない信頼と義務感)を反映していると考えられる
メンタライジングと社会的認知
「近しい感情」という感覚を支える認知は、わかりやすいとは言えないものの、比較心理学者は発達心理学者が一つ同意していることがあるとすれば、それはなんらかの「社会的認知」にかかわるということ 人には心に関する独自の理論あるいは信念があるということ
私達は他人も自分と同じく心を持つことを認識していいる
メンタライジングとは、正確には「信じる」、「推測する」、「想像する」、「望む」、「理解する」、「考える」、「意図する」などという言葉を運用する能力にかかわる
心の哲学者は、これらの言葉を指して一般に「志向性」という言葉を使う 志向姿勢または志向的構えをもつ能力
この意味における志向性は、「志向意識水準の次元」として知られる心的状態の自然な再帰的階層構造を形成する ということは、形式的な心の理論は二次の志向意識水準であり、この水準には自分と他者双方の二つの心的状態がかかわっている それ以上になると、「自分の信念について考える状態」あるいは「他者の信念に関する別の他者の信念について考える状態」にかかわる、3次、4次、5次と無限に再帰する心的状態の層がある
ヒトは生まれながらに心の理論をもつわけではないが、生後まもなく自己意識(一次の思考意識水準)を持つようになる
子どもたちは5歳で完全な心の理論を獲得し、10代のうちに正常な成人と同じ五次の思考意識水準をもつことができるように階層を上がっていく
この段階でヒトは「エドワードが何かを意図しているとスーザンに信じてもらいたいとピーターが望んでいるとあなたが推測していると私は信じている」といった言明を理解できるようになる
私達が正常なヒトの成人を対象に行なった実験によれば、多少のばらつきはあるものの、志向意識水準の平均は一貫して5次だった
5次を超える志向意識水準を把握するのは、成人のわずか20%ほどにとどまる
応答時間検査と脳イメージング双方を使って、私達はメンタライジング課題が同等の事実記憶課題に比べて相当に難しいこと、主要なメンタライジング・ネットワーク内の神経活動料量とその人が処理している志向意識水準の間に相関があることを実証した 課題が要求する志向意識水準が上がれば上がるほど、正しい答えを得るにはより多くのニューロンを動員せねばならなくなる
社会脳はかなりコストがかかるので、高次の志向意識水準を処理する脳領域の容量はその人が処理できる志向意識水準に比例し、高次の志向意識水準を処理しなければならない生物種は大きな脳を必要とする
無論、類人猿の脳においていちばん最近進化した領域こそ、この前頭前野内の領域だったわけで、社会的にもっとも複雑な種において一番大きな領域なのだ
これらの領域はまた、脳内で最後にミエリン化される部位でもある このことは、複雑な社会を生きていくための技能を習得するには、かなrの社会的学習と神経系の適応が必要であることを示している 志向意識水準の次元は本書のテーマにとってことのほか重要な意味を持つが、それはこの要素が現生人類と他の霊長類の認知状の差異を示す定量的指標となるからだ
ある意味において、メンタライジングが認知という文脈においてどのような意味をもつかを、真に理解するのは重要なことではない
しかし、志向意識水準は社会的認知の複雑さを示す簡単で信頼できる尺度をもたす
おおかたの人が同意するところによれば、全てとは言わずとも大半の哺乳類は一次の志向意識水準を持つ つまり、サルは自分の心の中味は理解するし、自分の外界に関する信念があることを認識している
もちろん、彼らはヒトの五歳児ほどの能力はないが、ようやく志向性を理解し始めた四歳児ほどの能力は持つ
そしてこの階層構造のもう一方の側では、正常なヒトの成人は五次の志向意識水準を処理できることを私達が得たデータが示している
これらの検査結果を前頭葉容量の関数としてプロットすると、驚くほどきれいな線形のグラフが得られる(Dunbar, 2009) https://gyazo.com/b279b4dbd2da8b48dffdc56671436001
●メンタライジング能力を実験によって描くにされた種
○メンタライジング能力は未知だが、同一の分類学上の科に属する他の個体と同じメンタライジング能力をもつと推定される種
このことは、これらの脳領域内の神経容量がメンタライジング能力と正比例していて、ヒトの成人を対象に私達がおこなった脳イメージング実験で種内に認められた関係と対応することを示している
なぜ単婚が進化したのか
ごく最近まで、霊長類の社会的進化の再構築はおおむね推測の域を出ないと考えられてきた
おおかたの人が同意するところによれば、私達の祖先にあたる霊長類は小型で夜行性であり、個別に散らばった半単独制の社会を形成し、メス(と子ども)は他のメスとなるべく重ならない小規模な縄張りで食物を得て、オスは数頭のメス(これらのメスとの交尾権を独占する)と重なるより大規模な縄張りで暮らした。 社会進化の次の段階では、これらの個体が次第に永続的な集団を形成していき、その集団の規模によって社会組織の形態がほぼ決まった、と長らく信じられてきた
一つの自明な筋書きは、あるオスが自分の縄張り内のメス一頭と緊密な関係を作り上げ、一雌一雄(単婚)にいたること 他のメスがこの二頭に引き寄せられたとして、さらにこれらのメスの存在が他のオスを引き寄せたとすると、多雌多雄の大集団が形成される 多くの関連書では、たいていこれが社会的進化の標準モデルとして掲載されていて、それは社会生態学的モデルとして知られるところとなった このモデルでは、ある生物種の社会体制はその個体数後構成の結果で、それはさらに食物探しの生態の結果に過ぎなかった
彼らの解析を可能にしたのは、きわめて高度な新統計手法の開発だった
これらの手法では、祖先の状態を推測し、社会組織と異なる社会圧の間の歴史的相関に関する仮説を検証することができる
これは目的の変数に関する祖先の状態を霊長類の系統学を通して再構築し、ある状態から別の状態への転換が起きた順序を現生種にいたるまでさまざまな進化経路に沿って調べることで行うことができる 行動または社会組織が変化する原因となるには、それが影響を与える行動の変化に先立って淘汰圧に変化がなければならない
これを調べるための統計的手法はベイズ統計学にもとづいており、こうした類の問題に対する過去の解決法に対する新たな進展を提供する この手法で行った解析によれば、散財する各個体が縄張りをもち個別に食物を探すという祖先の状態から、多雌多雄の社会体制に直接移行した可能性が極めて高く、単婚の段階はなかったと思われた
言い換えれば、それまでは別々に食物をあさっていた動物たちはだんだん集団を形成するようになったが、それは捕食される危険性が増えたためのようだった
このことはおもに夜行性から昼行性の生活への転換と関わっていた また、ハーレム社会を経て単婚社会にいたる経路も考えられる
祖先たちはいったん集団を形成すると二度と半単独制に戻ることはなかったが、ハーレム社会と集団にオスがたくさんいる状態のあいだを何度も行き来した
ほぼ社会生態学モデルによる予想通り
しかし、真に重要な発見は、単婚から抜け出す道はないということ
いったんある生物種がこの状態を選ぶと、そこから逃れることはできないように思われる
実際、単婚は一種の人口統計上/認知上の落とし穴にあたり、それはおそらく単婚に対する認知上の需要がきわめて大きいために、脳がいったんそのように配線されたら下に戻るのは難しいためらしいのだ
単婚では、雄と雌は互いに寛容でなければならないが、同性の個体全てに対してはなはだ不寛容でなければならない
したがって、単婚の霊長類は必ず縄張りを主張するようになり、各つがいが独自のなわばりを占有する
こうした同性に対する不寛容は、単婚の種を除けば哺乳類ではいたって珍しく、このために同性の数個体が一緒に暮らすのはことのほか難しい
他の鳥類や哺乳類と同じように、完全に無条件な単婚(どの個体も常時その関係を保つ)は、行動や認知に重大な変化を要求するきわめて特殊な進化状態であるらしい ひとたびこの状態に入ると、もう後戻りはできない
あとでヒトのペアボンディングについて考える時、この点を思い出すことが大切になってくる 単婚はひときわ特殊な進化史をもつので、この関係がなぜ社会体制または配偶体制として進化したのかを考えねばならない
これまでに、哺乳類の単婚については次のような異なる三種の説明がある
両性による子の養育の必要性
大きな脳を持つ子を育てるには両方の親が必要になる
雄による雌の保護
雌が広い土地に散らばっている場合、雄はいちどきに一頭の雌しか助けられないので、一頭と行動をともにすることで、少なくともこの雌が発情したときには受胎させることができ、他の雄がこの雌に手出ししないようにもできる
自分や子が他の雄に襲われたり殺されたりしないよう、雌は雄のそばを離れない
子殺しのリスクは、霊長類の深刻な問題として長い間考えられてきた
霊長類の大きな脳は繁殖率を下げる方向にはたらくので、別の雄から雌を受け継いだ雄は自分の子を産んでもらうのに一年以上待たなければいけないかもしれない
ところが、その雌の現在の子を殺してしまえば、雌はただちに受胎可能になるので、雄は自分の子を孕ませることに専念できる
乳離していない子を失った雌にも同じことが起きる
つまり、月経にかかわるホルモン系は、赤ちゃんが胸に吸い付くことで抑制される 赤ちゃんが弱ってきて、乳を吸う頻度が一定の数値を下回ると、月経に関わるホルモン系が再び活発になる
ヒトでも赤ちゃんが死んだり殺されたりすると、母親の月経がただちに始まるのはこのため
この見方によれば、霊長類の雄には子殺し行為に対する強力な淘汰圧があり、子殺しは霊長類で驚くほどよく見られ、このために子殺しのリスクを緩和あるいは減少させる対抗戦略を取るという同等に強力な淘汰圧があるという
シュルツとオピエの二番目の研究では、さまざまな霊長類の系統で単婚への転換が、これら三仮説のそれぞれにおける行動指標が変化する前後のどちらに起きたかが調べられた
単婚と雌が散在する大きな縄張りに住む形態は共進化するという証拠があるが、雌の縄張りの大きさは単婚が進化する前に増えるわけではない これが意味するのは、雄による保護仮説を裏付ける重要な前提が崩れることだ
事実、霊長類のどの単婚種も雄が複数の雌を守れないわけではなく、どうしてもそうしたい場合には、その種の雄は広い範囲を行き来して数頭の雌の縄張りを守ることになる
散らばっている雌を雄が守るためという理由は確かに大半の哺乳類では単婚の進化を説明できるだろうが、霊長類ではその限りではないようだ
同様に、単婚と両親による養育が共進化したという証拠もあるが、単婚は両親による養育の有無にかかわらず進化していることから、両親による養育は単婚の原因というより結果らしい
いったん単婚になると、二親そろって子を育てる方が雄にとって利点になる
その方が多くの子を育てられるから
とはいえ、両親による養育に協力する雄の能力は、単婚の進化をうながすほどの利点ではなさそうに思われる
少なくとも霊長類ではそうらしい
最後に、単婚と子殺しのリスクを示す2つの異なる指標との間には強力な共進化があるが、一雄多雌から単婚への転換は子殺しのリスクが高くなければまず起きない
少なくとも霊長類では、子殺しは単婚が進化する重要な要因のようだ
しかしながら、雄が雌を守る一対一の関係が、子殺しのリスクに対する唯一の解決策というわけではない
この種では、体の大きさに極端な性的二型があるために、いちばん体が大きくて強い雄が小さい雄より保護者として魅力を増し、このことが雄が体を大きくさせていくというフィードバック・メカニズムにつながった 一方で、テナガザルやより小型の新世界ザルのようにふつうは単婚の霊長類では、雌雄の体の大きさは同じになる(雌の方が雄より若干大きい場合もある) ゴリラの社会体制はより社会的なサルとは大きく異なっていて、雌が毛づくろいにもとづく同盟を結ぶ
彼らは星型の社会構造を持ち、雄を中心に周りに延びる何本もの枝の先に雌がそれぞれ陣取る
雌はそれぞれこの雄の毛づくろいをするが、雌同士で毛づくろいすることは滅多にない
ホミニンの社会進化を見るときには、これらの一般的原理を忘れてはいけない あらゆる霊長類のごとく、ホミニンもこれと同じ社会的、繁殖的淘汰圧にさらされると考えねばならないからだ
基本的には、社会集団の規模が増えるにしたがい、雌はどんどんストレスにさらされ、雄は他の雄との競争に明け暮れる
こうした制限条件を緩和する解決策を見つけなければ、新しい生息地を占有したり、大きな脳をもつ種に進化したりできなくなる
そうなれば、気候変動によって適切な生息地が狭まった場合には絶滅してしまう
ホミニンが生き延びたことはわかっているので、どうにかして問題を解決したことは確かだ
そこで人類の進化を可能にした2つの基本的原理、すなわち脳の大きさと時間収支が問題となる 脳の大きさは環境条件に応じて社会集団の規模を決定し、集団の規模と環境条件は、新たな進化を可能にするために必要な時間収支を要請する